カルティエのデザイナーについて

カルティエは1874年にフランス人宝石細工師ルイ=フランソワが、師匠であるアドルフ・ピカールから受け継いだジュエリー工房が元となって誕生した世界的な老舗ジュエリーブランドです。
顧客でもあったイギリス王エドワード7世から贈られたという「Jeweller of kings ,king of jewellers」の異名でも有名です。

250年近い歴史を誇るブランドですから、当然その長い経営の中で多くの著名デザイナーを誕生させています。
その中でも最も有名な人物を一人あげろと言われれば、多くの人がシャルル・ジャコーの名前をあげることでしょう。
シャルル・ジャコーはブランドの黄金期を作り上げたと言っても過言ではない人物で、その仕事ぶりは職人の域を超えた芸術だと言われています。
その実力は彼のあだ名が「ジュエリー・デザインのピカソ」であることからも分かります。

シャルル・ジャコーの作り出すデザインは彼が活躍していた1920年代に世界中に流行したアール・デコと呼ばれる様式に大きな影響を受けています。
アール・デコの特徴は大きく2つあげることができます。
1つは世界中のありとあらゆる芸術様式を取り入れ組み込んだ貪欲さです。
これはアール・デコが花開いたのが人類史上で最も壮大に開催された万博の1つであるパリ万国装飾美術博覧会の場であったことと無関係ではないでしょう。
同時代を生きたピカソが創始したキュビズムから発掘ブームにわいていた古代エジプトの埋葬品、アステカの野性的な文様、はては日本や中国の水墨画の影響まで含み、それでいて従来の有機的デザインから近代都市生活の訪れを感じさせる実用的な美意識はまさにカオスです。
2つ目は前時代に流行したアール・ヌーヴォーのような貴族や大金持ち向けの一点ものではなく、大量生産を意識したデザインであるということです。
アール・デコは一時期の流行が去ると悪趣味な装飾として敬遠されますが、1966年に開催された25年展をきっかけとして、モダンデザイン批判やポストモダニズムの文脈の中で再評価が進んでいます。

確かにアール・デコのデザインは私たち現代人からすると、やや独特な雰囲気を醸し出していますが当時の人々が近代という新たな世界に抱いた未来的イメージは決して悪趣味なものではありません。
それはシャルル・ジャコーの手がけたデザインの代表作の1つ「彫刻の施された水晶のペンダント」を見ても明らかです。